2026/11/08
プログレッシブロック 音楽
このブログには、2018年の秋から2019年の初めにかけて書いた「プログレ名盤」というシリーズがあります。プログレッシブ・ロックの、あまり知られていない名盤を1枚ずつ紹介したものです。
全部で6本。イタリアのバンドが3枚、イギリスのエッグ、アメリカのハッピー・ザ・マンが2枚です。
10月に、FENで洋楽に出会ってベースを弾くようになった話を書きました。そのときに自分の過去記事を見返していて、このシリーズのことを思い出しました。8年ぶりに読み返してみると、アルバムの感想そのものより、ところどころに書いていた自分の体験のほうが、ずっと面白く感じました。
シリーズの最初は、イタリアのロベッショ・デッラ・メダーリャ(Il Rovescio della Medaglia)の「汚染された世界(Contaminazione)」でした。
読み返すと、当時の私は「ファースト、セカンドを聴いたことはありません」と正直に書いています。そのうえで、ニュー・トロルスの「コンチェルト・グロッソ」に近いと感じ、調べてみたら同じスタッフが関わっていた、と書いていました。
クラシカルな曲調とヘヴィーな部分が交互に出てきて飽きない。キーボードの音は、何となくディープ・パープルのジョン・ロードを思わせる。どれも、聴きながらそのまま書いたような感想です。
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いちばん印象に残っていたのは、イル・バレット・ディ・ブロンゾ(Il Balletto di Bronzo)の「YS(イプシロン・エッセ)」の記事でした。
このアルバムは、記事を書いた時点で約30年前、近所のレコード屋さんにいたプログレ担当の人のお勧めで買ったものです。CDではなく、レコードでした。
それまでもイタリアのプログレは色々と買っていて、気に入ってはいました。でもこのアルバムは、最初からインパクトが強すぎました。まさに自分が求めていたイタリアンプログレだった、と記事に書いています。おそらく、ゴブリンの「サスペリア」のような、おどろおどろしいものを求めていたのだと思います。
途中のベースラインは、コピーもしました。ベースを弾いていた自分にとって、聴くだけでなく「弾いてみたくなる」アルバムだったのだと思います。
今のように、ネットで検索すれば何でも試聴できる時代ではありませんでした。どれを買えばいいのか分からない海外のプログレを、店の人が勧めてくれる。その一言が、何十年も聴き続ける1枚につながることがあります。
購入はこちら:イル・バレット・ディ・ブロンゾ「YS(イプシロン・エッセ)」(Amazon)
同じ記事には、こんなことも書いていました。
以前はこのバンドのファーストアルバムも持っていたけれど、「YS」とのあまりの違いに、すぐ中古屋に売ってしまった。今では手放さなければ良かったと反省している。
同じバンドでも、アルバムによって音がまったく違うのは、プログレではよくあることです。最初に「YS」の衝撃を受けた耳には、ファーストが物足りなく聞こえたのでしょう。でも時間がたつと、その違いこそが面白く感じられるようになります。
記事を書くためにデータを調べていて、このバンドが2回も来日していたことを初めて知りました。「観たかったなー」と書いています。
公演の話は、ほかの記事にもありました。
エッグの記事では、昔、バーバラ・ガスキン&デイヴ・スチュワートの来日公演を観に行ったことに触れています。エッグのデイヴ・スチュワートが、のちに組んだユニットです。
シリーズ最後の記事は、イタリアのアルティ・エ・メスティエリ(Arti & Mestieri)の「ティルト(Tilt)」でした。ヴァイオリンとサックスが入ったサウンドを、キング・クリムゾンの前期と後期を合わせた感じ、と書いています。そして何より、サウンドの核はフリオ・キリコのドラムだと。
購入はこちら:アルティ・エ・メスティエリ(Arti & Mestieri)「ティルト(Tilt)」(Amazon)
この記事の大半は、2019年5月18日に川崎のクラブチッタで行われる来日公演の告知でした。「絶対に観に行きたいです!」と書いていますが、結局、観に行けませんでした。
シリーズのどの記事にも、最後に同じ一文が入っていました。
「プログレ名盤シリーズはCDを聴く都度に色々と感想を書き足しますのでご了解くださいね。」
読み返して、少し苦笑いしました。結局、書き足すことはないまま、シリーズも6本で止まっていますが機会があったら復活したいです。
ただ、悪いことばかりでもありません。書き足さなかったおかげで、2018年の自分の感想が、そのままの形で残っています。
2014年に、「受動的音楽と能動的音楽」という記事を書いていました。テレビやラジオから流れてくる音楽を聴くだけでなく、自分から探して聴いてほしい、という内容です。
レコード屋のプログレ担当の人に勧められて買った「YS」は、まさに能動的に音楽を探していたからこそ出会えた1枚でした。店に通い、棚を見て、店の人と話す。そうしているうちに、自分の好きなものが少しずつはっきりしていったのだと思います。
今は、聴いた曲から次の曲を自動で選んでくれる仕組みもあります。便利ですが、「人に勧められた1枚」には、また違った重みがあるように感じます。
今回読み返して、いちばん強く感じたのはこのことです。
6本のうち、アルバムを知ったきっかけや買った場所まで書いていたのは、「YS」の記事だけでした。ほかの記事は、感想とバンドの紹介が中心です。
もちろん、感想にも価値はあります。でも何年もたってから読み返すと、「どこで、誰に勧められて、何で聴いたか」という話のほうが、ずっと記憶を呼び起こしてくれます。そしてそれは、ほかの誰にも書けない、自分だけの内容でもあります。
もしこのシリーズを再開するなら、今度は1枚ごとに「どこで出会ったか」から書いてみたいと思います。
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